中古家具店のウェブサイトでその椅子を見つけたのは4月になったばかりの気持ちのいい朝だった。 少し早めに満開を迎…
「大丈夫よ。私、晴れ女なの」 そう彼女は言った。 昼過ぎに降り出した雨はまだやむ気配がなく、予報では翌日まで続…
トンネルと呼ぶにはあまりにも短く幅も狭い。 僕を乗せた小さな自動車でも対向車とすれ違うことはたぶんできない。小…
独り住まいのベッドで横になり、彼は残り少なくなった時間に思いを巡らせていた。 もうだいぶ長く生きた。 やり残し…
慌ただしく整理した部屋の隅にはいくつものダンボール箱が置かれている。 「結局間に合わなかった。今日までに片付け…
彼が山奥の病院に手紙の差出人を訪ねたのは、まだ暑さの残る9月の中頃だった。 車両とホームの間には20センチほど…
そのアパートが建っていた区画は見事に消滅し、ショッピングモールの第3駐車場という名がつけられた広大なアスファ…
今日と明日をつなぐ藍色の夜。 静かな寝息をたてるあなたの隣で、僕はふたりが通り過ぎてきた朝の色を思う。 いさぎ…
いま私はこの自分のことがよくわからない。 ただ、自分がここに存在している意味だけははっきりと理解している。だか…